今夜あなたの夢を見ます

自閉症スペクトラム障害と統合失調症を抱える私が、唯一心的どすっぴんでいられるところ。

掘り出し物レビュー②

 

【HAPPY TURN/ポリバケツメガホン】

キラッ。ピコッ。
初めて耳にしたのは、難波のタワーレコード。試聴したわけではなく、その時たまたまこのアルバムが店内で流されていた。 いつもならヘッドフォンをつけたまま店内をうろつくのに、その日はたまたまそれを着けていなかった。当然耳には店内のSEが入ってくる。それが、これだった。 なんか矢鱈キラキラしていて、普段私がよく聴くロックやオルタナのようにガツガツもしていなくて、なんだか可愛いな、そんなことを思いながら、その日はCDを探すこともジャケットを見ることも無くタワーレコードを後にした。 それから月日が過ぎても、ふとした瞬間に思い出す。何度も何度も「欲しいなぁ」「次行ったら買おうかなぁ」なんてことをぼんやりと考えながら、時には完璧なまでに彼らの存在が頭に無い状態で、日常を暮らしていた。
なんか最近新しくて好い音が無いなぁ、見付かんないなぁ。 そんな思考を毎日巡らしていた。 段々、自然と熱は冷めていった。
先日、たまたま友人とタワーレコードに行って、ポリバケツメガホンのジャケットを目にする機会があった。本当のところ、ジャケ買いとまではいかない外見だったのに、私はそのCDに声を掛けられた気分に陥った。熱が、息を吹き返した。 元来ハウスミュージック等の4つ打ちにも心を開いている私は、ロックな4つ打ちが好きで、それでも選り好みをしてしまうからなかなかストライクゾーンど真ん中に飛び込んでくる曲は少ない。
久し振りに、ど真ん中。
CDの帯にも記載されていたように、そして私が冒頭にも書いたように、キラキラピコピコしていて、可愛いのに切ないメロディーラインが、じわりじわりと私の頭の中を埋めていく。それは今も続いている。 「オシャレ」という一言では言い表せない。 「可愛い」とも少し遠い。 ただ本当に優しくて、聴いていて音に包まれる感覚が心地良い。なのに、状況に因れば涙を流すキッカケになる。その涙は、最初は悲哀や後悔から生まれた涙ではあろうけれども、彼らの作品に寄り添っていると自然と暖かな涙へと変貌を遂げる。劇的に変わるわけではない。自然に悲しみは緩和され、気付けば涙で濡れていた頬も緩んでいる。 誰か大切な人が寂しい瞳を纏っている時は、偶然この曲達と知り合って欲しいと思う。私から薦める、なんて横暴なことなく気付いて欲しい。
どれだけ流しても枯れない涙でも、止まることはあると。 濡れた頬を乾かす音が、ここにあるのだと。
真っ直ぐ耳に飛び込んでくる澄んだ声、それに付いて届く、分厚くて柔らかな電子音。久々に故郷に帰ったような気分になる。初耳なのに懐かしくて、だけど新しくて、ほっとするのに胸が高鳴る、そんな、大切な気持ちを思い出させてくれる。
キラッ。ピコッ。
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